オオ、ジュニア!

~ありふれた少女の非凡な一日~

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雪国の冬はひどく寒くて参っている。
酷い時にはもはや寒さではなく、刺すような痛みを感じる程である。
こんなのが四季の一つだとは僕は認めない。こんなのはチクチク地獄だ。
加えて室内では親の仇と言わんばかりにゴウゴウと暖房を炊くものだから、風情なんてあったモノではない。
ビルに入った途端に外套を脱いでも汗がジンワリ滲むなんておかしいだろう。
珈琲がより一層美味しく感じる優しさよ。
自然と身を寄せ合ってしまう温かさよ。
一枚の毛布に包まり借りてきた映画を観る幸せよ。
そんな冬が僕は恋しいのだ。


嗚呼、春が恋しい。
目が醒めて何も気に留めること無く、布団から出る。
昼下がりのカフェでぼんやりと本を読み耽り、ぬるくなった珈琲を啜る。
少し肌寒い夜の公園を散歩する。

嗚呼、夏が恋しい。
けたたましい蝉の鳴き声に目を醒ます。
アスファルトを打つ雨の匂い、水溜りを蹴る音。
キラキラと反射する水面に目を細めながら海沿いをバイクで走る。
思わず駆け出したくなるような夜の雰囲気。
眠る時に掛けるブランケットの軽さ。

—嗚呼、秋が恋しい。
布団の温かさに少し嬉しさを覚える。
肌を撫でる風の優しい温度。
葉の擦れる音を聴きながら落葉の絨毯に寝転ぶ。
キッチンからは秋刀魚が焼ける匂いがする。
夜風が冷たさを堪えながら、時間を惜しむようにバイクに跨る。


「早く冬なんて終われば良いのに」とぼやくものの、冬に雪があるということはなかなか良い。

しんしんと降る雪を眺めながら、コックリコックリ炬燵で転寝する。
早朝に新雪を踏む音を一歩毎に噛み締めながらも待ち合わせへ急ぐ。
年甲斐も無く雪遊びに耽って霜焼けになる。

なんだ!雪国っていい所じゃん!

……えっ?

あぁ、うん、雪掻き……(虚ろな目)