オオ、ジュニア!

~ありふれた少女の非凡な一日~

チントンシャンテントン

 三味線の擬音らしいですね。スーパーで流れていたクリスマスソングを耳にして、ふと思い浮かんだのだけれど概ね的外れ。試しにチントンシャンと鳴らして空を滑るサンタクロースを空想してみたけれど、やっぱりなんだか間抜けだ。

 

 先日、健康診断を受けに行ったらそこがわりと大きな総合病院だった所為か、死にかけの人やそうじゃない人に囲まれてへろへろに疲れた。周りのみんなの顔や話を見聞きしていたら、なんだか切なくなってしまったのだ。今でも思い出す度に少し心が細くなる気がする。

 病院は嫌いだ。幾つになっても注射は怖いし消毒液の匂いは気が滅入る。それにお医者様の前に座らされると何故だか酷く申し訳ない気持ちになる。くだらない悪戯で叱られているような気持ち。僕がまだ小学生の頃、注射が嫌で学校から逃げ出したことがあるからかもしれない。
「運動はされますか?」
「いえ、あんまりしないですね」
「お煙草は?」
「あ、吸ってます」
「一日どれくらい?」
「えっと、一箱ぐらいですかね」
「何年吸ってますか?」
「……4年程」
「正直に」
「……6年、です」
「学校卒業したら煙草も卒業しましょうネ」
「はあ」
 いまになって思い返すと普通に叱られている気もする。まあいいや。叱られた記憶なんて遠い昔のことなので、叱られ方を忘れてしまっているのかもしれない。
 
 ちなみに、健康診断の結果は" 「至って健康(低血圧である点を除く)」だそうだが、一晩寝たら風邪を引いた。鼻からくるやつ。鼻の風邪を引くと幼い時分に呼吸を忘れる程泣いた事を思い出す。鼻が詰まっているのに匂いがするなんて変だけれど、あの時と同じ匂いがする気がする。風邪を引くと少し火照った身体とふわふわした感覚も相まって、ノスタルジーに駆られるのは僕だけだろうか。そういえば、最後に看病されたのはいつだったっけ。