オオ、ジュニア!

~ありふれた少女の非凡な一日~

∀と∃の間で

母上から大きなダンボール箱に詰まった仕送りが届いた。

「いやに重たいな」と思いつつ開けてみると、中には正気の沙汰とは思えない量のチョコレートが入っていた。

……何度でも言おう。

僕はナッツ入りのチョコレートが大嫌いだ!

ファッキン・ヴァレンタイン!

 

 

このブログはTwitterFacebookに未だ連動はさせていない。

誰か現実に知っている人の目に触れていると意識してしまうと、もう駄目なのだ。

僕が僕と認識されてしまった瞬間に、何も書けなくなってしまう気がする。

誰かに向けた言葉を書いてしまう気がする。

見栄のようなモノが芽生えてしまう気がする。

それらが怖い。とてつもなく怖いのだ。

 

……嗚呼、やはり僕は弱い。

この弱さ故に今日も壁に向かって喋り続けているのである。

誰か壁の向こうに居るかもしれないと、淡い期待を持ちながら喋り続けている。

壁の向こうの君よ、こんなにも滑稽で無意味な行為を是非笑って欲しい。

その嘲笑を受け入れる度量の広さなぞないのだ。

面と向かって語り掛ける勇気なぞ持ち合わせていないのだ。

……嗚呼、強くなりたい。

 

「任意のひとり」という言葉を友人から聞いた。

小説家である浅井次郎氏の言葉だそうだ。

こんなにも短い言葉でピタリと嵌る表現をしてしまうなんて。

一度聞いてしまうと、それ以外に相応しい表現は無いように思えてしまう程に美しい。

これだから小説家の先生はズルい。

こんなの言葉と出会ってしまうとファンにならない方がおかしいではないか。

 

 

さて。冒頭の仕送りの話に戻ろう。

多くのチョコレートを掻き分けると、底の方に大量の宜保の糸も詰められていた。

わからない……僕には母上がわからないよ……!

「季節考えようよ!あとせめてもっと凡庸性の高いパスタなどを入れてくれよ!」

と思った矢先に更に下から申し訳程度のパスタも出てきた。

……もしかすると僕は母上の掌の上でタップダンスを踊っているのかもしれない。

うーん。家族って怖いなぁ。